『0_1』がもつブランドイメージは、デザイナーLinyi(リンイー)自身そのもの。静的なスナップショットは、美しいインテリア雑誌を開いたような空間デザインと、陰影でレイアウトされています。ショップページを見ているだけで、デザイナーがキュレーションした瞬間を、親密な距離感で共有することができます。
Linyiは、彼女が大学在籍中からモデル活動をはじめました。爽やかな見た目と繊細でひかえめな内面は台湾のミレニアル世代に広く知られています。また数多くのミュージックビデオにも出演してきました。
彼女は今、自身のファッションブランドである『0_1』のモデルをしていますが、有名人であることをあまり前面に出しません。顔を特大のサングラスや髪でに隠したりすることが多く、場合によっては彼女の背中からカメラに向けることも。
彼女がデザインした衣服を集中して見ることができるよう演出されています。(そのスタンスには、彼女がモデルとしての立ち位置と、デザイナーとしての立ち位置とを別々にとらえているようにも感じます)
▷ コットンドレス
ブランドストーリー
Linyiは、2012年に『0_1』を設立しました。ブランド名『0_1』は自身の名前(林羿)を中国語読みした音を数字に置き換えたもの(林=リン⇒0、羿=イー⇒1)に由来します。本格的なビジネスというよりプライベートな趣味、出張というより旅行、というプライベートな響きを持つブランドです。
ファッションデザイナーになるまで
私は優秀な生徒ではありませんでした。
台湾で社会的地位は学位と資格によって大きく左右されます。学業を終えて、台北から地元の苗栗(台湾中北部)に戻ったあとも、このままでは私は何者にもなれないような気がして不安になっていました。そんなとき、姉から「じゃぁ、ファッションデザインはどう?」と聞かれたのが、ファッションブランドを立ち上げる大きなきっかけになりました。
その後、實踐大學(Shih Chien University)のファッションデザイン専攻に入学した私は、学費を得るために、大学主催のファッションウィークに取り組みました。私はファッション業界とのつながりがなかったので、自分でモデルを探し、友人にスタイリングを手伝ってもらいました。しかしその甲斐あって、低予算でプロジェクトを終え、優勝することができたのです!
終わりよければ全て良し、学費を完納し、手伝ってくれた友人たちにも恩返しができました。1位を獲った時にパタンナーの先生から「あなたはどちらかというと優等生ではなかったし、パターンのデザインもあまり得意ではなかったのに、どうやって優勝したの?」と言われました。でもそう話す先生の顔は、本当に幸せそうでした!
『0_1』が伝えたいメッセージとは
あなたらしい、ありのままのあなたでいることを、そっと誰かがいつも側で見守っています。
▲ 『0_1』は複雑なスタイルを好みません。私は「物事をシンプルに、ナチュラルにする」スタイルが好ましいと感じています。
自然の中に、複雑なデザインはありません。歴史的に見ても、シンプルさは時代を問わず静かに根付いています。
私のゴールは『0_1』の製品を扱う『0_1』のための路面店を持つことです。
『0_1』のお店は誰もが安心して気軽に楽しめる、居心地の良い場所です。現在、日本と韓国のファッションはとても人気がありますが、もっと多くの台湾人が台湾人デザイナーのファッションを身につける日が来るといいなと思い、楽しみにしています。
リンイーが達成感を感じるのはどんな瞬間?
人々が私のデザインを必要としていると感じることです。
たとえば、私が2016年2月に作った「オーバーブラウス・葉模様(現在販売終了)」は、24時間で完売。さらに、完売したそのブラウスが別のサイトで、更に高い価格で再販されていたので、それによって強い自信を持つことができました。私が『0_1』のためにデザインしたものを、お客さまに評価していただき、本当に感謝しています。
一般的なモデルの活動では、最終的判断をするのは私ではなくディレクターやクライアント。しかし、私のブランド『0_1』の活動では、私が自分自身の思い描くイメージを細部まで追求することが求められます。
私は自分のブランドネームタグのたった0.01cmの差異であっても、納得がいくまでメーカーさんと自分のアトリエとを何往復もします。たとえ彼らから「それは無理です」、あるいは「私たちの製品にそのサイズはありません」と言われても、私は自分の要求を遠慮せずに伝えます。そうすることでメーカーさんたちとコミュニケーションが取れ、より良いものが作れるからです。
今振り返ってみると、私が意思決定を行い、妥協しないことが自分のブランドイメージを形作ったことに気付きました。これも達成感を感じた瞬間の一つです。
今まで直面してきた最大の課題は何ですか?
台湾のファッション業界は中小の独立デザイナーの参入が非常に難しいのが現状。私たちはよく周囲から「小ロット過ぎる 」とか「わざわざそんなにこだわらなくても」などと言われます。しかし『0_1』の価格を上げることに、私は反対し続けています。
▲私は衣類のデザインをしたいと思っていたので、輸出衣服事業、ファッションブランド、デパートなどでこれまで働いてきました。
メーカーの方が私たちのような中小企業に向かっていつも言うことがあります。私たちのようなブランドは資金不足や必要ロット数に満たないので、彼らにとっても有益なビジネスにはなりません。これは同じ規模の多くのブランドが抱えている悩みです。しかし私は収益がプラスマイナスゼロであったとしても、商品の品質と私の美的基準(適正価格を含め)を優先させます。
『0_1』では、台湾国内で入手できるものよりも2〜3倍高価な日本の生地を使用しています。着心地や触り心地の良さといった快適さと品質を追求すれば、『0_1』を魅力的と感じてくださる方々を大いに惹きつけることができると私は信じているから。
0_1はPinkoiに参加してどのように成長しましたか?
私たちは国内外から(特に海外からの)受注を増やし、さらに成長を続けています。
私たちは2014年5月からPinkoiに参加しています。この間に海外からの注文も増加していて、香港、中国、シンガポール、マレーシア、米国、日本からの注文がほとんどです。こうした海外からの受注増加は、台湾のオリジナルデザインが世界中で評価されている、と私は真摯に受け止めています。
美しいデザイナーリンイーのインタビュー、いかがでしたか?
『0_1』のブランドサイトはこちら
洋服って、布を切って、縫って、身にまとう、本当にシンプルなものだからこそ、作り手のストーリーや世界観が美しいですよね。自分はそれを映し出す土台のような、そう映画館のようなもの。人が実際に身に着けて動いたところで、洋服が持つ話はクライマックスへとあるき出す…。『0_1』の記事を書いていると、こんなカッコいいこと、頭によぎってきました。
編集後記…
この記事を翻訳しながらサイトをブラウジングしていて、「どうしてもこれを着てみたい!」と購入しました。注文してからは10日ほどで手元に届きました。
ドキドキしながら開封し、
手に取ってみると
「ドレスがまとっている高貴な香りに…酔ってしまいそう」
そして、生地に触れると
「軽い、気持ちいい」
身につけてみると
「羽衣を羽織ったように軽くて身体に負担が少ない」
洗って干してみて
「ベランダで風に揺れてるのを、もっと見ていたい…」
と、興奮が止まりません。。単体では透けるので、スリップ代わりに以前購入した『makersgonnamake』の 黒色のワンピース を着ると、透け感も暑さ対策も、ちょうどよかったです。
右端の写真はパーティ会場で、カメラマンの友人に撮ってもらったもの。ギャザーがたっぷりなので、動くたびに裾がフワフワ動いて優雅に見えます。お祝い事なのでパールのネックレスと、ゴールドイヤリングを合わせて華やかにしました。
ウエストのポイントが低めなので、腰高にするよう少し高めのヒールをで色合いのある足元にしたらもっとバランスとれるかも…。と思うので、次はこんな感じのパンプスを合わせたいです!
marconzone │ Cinderella – love rose red –
原文:Designtrepreneur | 0_1 Women’s Apparel
抄訳執筆:甲田智恵
編集:東 洋子