毎日履く靴は、デザインも履き心地も妥協したくないですよね。
そんなこだわりのあるあなたに、おすすめしたい1足があります。
絵を描くように1足1足、手作りで靴を生み出す「HTHREE(エイチスリー)」は、革靴作りに歴史と定評のある台湾で、2014年に発足したブランドです。
↑ 地中海の海のようなグラデーションカラーのパンプス
今回、「HTHREE」と「Pinkoi」のコラボレーションで、日本初の販売イベントを開催することとなりました(イベント詳細はこちら)。日本初上陸を記念して、ブランド創設者の黃靖駩(ホァン・チンチュアン)さんに制作秘話をじっくり聞いてきました。
↑ 今回、インタビューに応えてくださった創設者の黃靖駩(ホァン・チンチュアン)さん。
HTHREEこだわりの靴づくりに隠された3つの工夫
ー 他とは違う、こだわりはなんですか?
黃:一番大切にしているのは「色」です。色の美しさを引き出すために、3つの工夫を施しています。
こだわり①:靴を組み立ててから、1足1足に色付け
普通の靴の製造工程では、染色した革のパーツを組み合わせて靴の形に組み立てます。でも私たちは、まず真っ白な靴を作り、立体の状態で筆を使って1足1足に色付けを施します。
↑ 真っ白な靴に色付けしていく黃さん。靴の形に合わせて濃淡を付けています。
ー 陶器の絵付けのようですね!でも、この方法だと制作に時間がかかりませんか・・・?
黃:おっしゃるとおり、前もって色付けした革パーツを組み立てた方が圧倒的に早いし、コストも安く済みます。世の中の靴メーカーの多くは、その方法をとっていると思います。
それでも私がこの方法にこだわる理由は、それぞれの靴の形に合わせて、色ムラや濃淡を微妙に調整できるからです。
↑ 手で染めていくからこそ、色に絶妙な濃淡が生まれる
ー 革は特別なものを使っているんですか?
黃:色付けをするために、白かベージュのなめし革だけを使っています。他の靴メーカーは下処理されている革を輸入して使うことも多いですが、「HTHREE」では色付けも仕上げ作業も自分たちで行うので、加工のほとんどされていない牛革をイタリアから輸入しています。納得のいく、上質な革にたどり着くまでとても大変でした。
こだわり②:形はシンプルに
色の美しさが引き立つように、靴の形はあえてシンプルですっきりしたものにしています。
ー 他では見かけない配色も特徴ですよね。インスピレーションはどこから?
黃:自分の好きな色から自由に発想しています。その色を見たときに抱く印象(上品、若々しい、可愛らしい など)と、履く人を想像しながら色を合わせています。流行の色も勉強程度には見ますが、ほとんど影響されることはありません。
↑ 色付け後の仕上げの作業
こだわり③:仕上げの工程を丁寧に
色付けが終わった後に、「革の毛穴を埋める」「発色を鮮やかにする」「光沢を出す」という3つの仕上げ工程が待っています。美しい色を出すために欠かせない大切な工程です。
ー これもまた時間がかかりそうですね・・・
黃:はい、ご注文を受けてから、お客様の足のサイズに合わせて制作を始めるので、1ヶ月のお時間をいただいています。お待たせはしてしまいますが、デザインにも履き心地にも満足していただけると信じています。
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日本のお客様にも評判の丁寧なカスタマーサポート
ー 履き心地も追求されているそうですね。
黃:買ってくれるお客様にはずっと心地よく履いて欲しい、という気持ちがあります。朝、家を出るときに「履きたいけど少し痛いんだよね……」と躊躇することがなるべくないように、と思ってサイズ調整に心を砕いています。
ー オンラインでの靴購入はサイズの不安が大きいですが、どのように対応していますか?
黃:ご購入いただく際には、お客様ご自身に素足を採寸していただき、サイズを送っていただきます。質問もいくつかさせていただきます。それらのデータをもとに、お客様1人1人に合わせて微調整を行います。それでも、もしサイズが合わなかったら、返送してもらって調整もしています。
HTHREEの靴がこれほどまでに色鮮やかな理由
ー ギュッと詰まったこだわりを知ると、まるで美術品のように見えてきます。そもそも、黃さんはなぜこの世界に入ったのですか?
黃:実家が靴メーカーなので、小さな頃から靴作りには馴染みがありましたが、大学では建築を学び、卒業後も建築事務所で働いていました。あるとき、先輩と飲み屋で話しているときに「自分だからこそ作れるものを持ちたい」という気持ちが湧いてきたんです。建築の仕事を始めて2年という良いタイミングでしたし、もともと、クリエイティブなことに興味があったので、家業を活かして靴のブランドを立ち上げることにしました。
ー 建築ご出身だったんですね。「色」にはいつ目覚めたのですか?
黃:建築は設計図などで白・黒・グレーを使うことが多いんです。モノクロですね。そんな中、大学の授業で「色を使ってイラストを描こう!」という課題がありました。この授業を通して色を使うことの面白さに気づきました。
↑ 色付けを終えて次の工程を待つ靴たち。
ー 男性が女性の靴を作る難しさはありますか?
黃:特に難しいと思ったことはありません。逆に男性だからこそ「こんな色を使うと綺麗だろう、形をこんな風にすれば機能的にも脚を美しく見せられるだろう」と考えることができると感じています。
ー 最後に日本のお客様にメッセージをお願いします。
黃:台北では2店舗を展開するほどになりましたが、すべての製作工程に妥協せず、自分のこだわりを持ち続けられる範囲で、ブランドを成長させていきたいと思っています。日本のお客様に実際に履いていただける機会を嬉しく思っています。
ー黃さん、ありがとうございました!
真摯に靴作りに励む黃さん。常にお客様のことを想っているからこそ、鮮やかな発色で抜群の履き心地の靴が生まれるのだと感じました。
インタビュー:ソフィー
テキスト:本島ゆか
写真:Nicholas