日本のデザイナーさんにフォーカスを当て、作品やブランドに懸ける想いを伺っていくデザイナーインタビュー。今回は、おしゃれなお香が目を引く「TRUNK DESIGN」さんにお話を伺いました。
ブランドの背景に隠れたストーリーを知ると、これまで以上に商品が魅力的に見えてくるはず。ぜひデザイナーさんの想いを読んでみてください。
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新たな発想とチームワークから生まれる商品
ー日本のお香発祥の地・淡路島で創業83年の歴史を持つ株式会社 大発、神戸マッチ株式会社と共に、お香とマッチをかけ合わせた商品をつくり上げられたTRUNK DESIGNさん。どういったきっかけで、このコラボレーションが生まれたんですか?
2011年に自社のプロジェクト「Hyogo craft(兵庫県のものづくりを紹介するプロジェクト)」を開催した際に、淡路島の線香組合を訪ねて「どこか先進的な動きをしている会社を紹介してほしい」とお願いしたことがあったんです。ただ、そのときには一社を特定して紹介することはできないと断られてしまって…。
数年後に偶然、神戸マッチ株式会社と「お香とマッチを組み合わせた商品をつくろう」という話が出てきて、紹介していただいたのが株式会社 大発さんでした。
ーお香とマッチを組み合わせるって、すごい発想ですよね(笑)。
本当にそうなんですよね。無茶なことを言うなよって言われながらも、難しい難題に果敢にチャレンジしてくれて(笑)。世界中でここでしかつくれない「hibi」という商品が生まれたんです。そんな「hibi」を試作する過程で、紙とお香が合体したものができたら面白いんじゃないかというアイデアが出てきて。
お香の職人さんが、手漉き和紙の修行に行き、自社で製造するための道具までつくりました。それによって生まれたのが手漉き和紙のお香「Ku」なんです。
ーみんなが同じ方向を向き、良い商品をつくりたいという共通の想いをお持ちだったからこそ生まれた商品なんでしょうね。
そうですね、使う人がどう使えば使いやすいのか、どういうものが日々の暮らしにマッチするのかを一緒に考えながら前に進んでいくという良いチームワークがあったからこそ、素晴らしい商品も生まれたのだな、と。また、デザイン・製造・販売といった役割分担をしっかりとし、自社にできないところは素直に任せるということが大切だと思っています。
日々の暮らしに溶け込むお香を
ー「Ku」は、葉っぱの形なのが、可愛いですよね。
最初から葉っぱの形の商品を考えていたわけではなかったんですよ。手漉き和紙のお香ができたら、印刷したり、紙のように折り曲げたりもできるんじゃないかというイメージだけで素材開発をしていって。株式会社 大発が素材開発を終えたのち「ここからデザインをして、商品にし、販路を拡大するという作業はTRUNK DESIGNにお願いしたい」と言ってくださったので、そこからブランドを協業していったという形ですね。
株式会社 大発の工場に行くと、本当にたくさんのお香があるんです。そんなお香の数々をブランディングしていきましょうという話から生まれたのが「Daily」でした。
「Ku」は、燃やしても燃やさなくても楽しめる新しいスタイルのお香ですが、「Daily」は、お線香を日常的に楽しむ香りに変えたもの。日々の暮らしのなかに溶け込んでいるようなイメージです。
ー「Daily」のパッケージに書かれている「Have a nice day」というフレーズが、まさにそれを象徴していますよね。
日常的に使えるお香ということで、香りにもこだわりが?
そうですね、「Ku」も「Daily」もいわゆるお線香の香りだけではなくて、アロマオイルにも使われているハーブやお花の香りを揃えています。なるべく天然の香料を使い、燃やしたときに幸せの空間が生まれるようなイメージでつくっています。
数々の香木コレクション
商品開発にあたって、いろんなメーカーのお香を国内外問わず取り寄せリサーチしているんですが、やっぱり株式会社 大発の香りはすごいな、と。香りのクオリティは、他とは全然違うと自負しています。
自分たちが毎日使い続けたいものにこだわっていますから、ぜひ実際に体験してみていただきたいですね。
ーゼラニウムや、クチナシ、ティーツリーなど癒されそうな香りが揃っていて、思わず全部試したくなります!
お香の香りをつくるのにも、調香師さんのような存在がいらっしゃるんですか?
この世界には、香司(こうし)と呼ばれる、香りのマイスターがいるんです。機械生産ではあるものの、香司が日々香りのチェックをしています。材料も「タブ粉」と言われるタブの木の粉を主な材料としていて。粉の香料を配合して、製造にも時間をかけているんですよ。
ーそうやって時間をかけて丁寧につくられているんだと思うと、実際に商品を使う私たちも大切にしようという気持ちが生まれてきますね。
人の手から生まれたものには温かみがありますよね。そんなつくり手の想いを、使う方にもちゃんと届けたいと思い、メディアもつくったんです。現場からお客さまのもとに届くまでの過程で、どうしてもその熱量というのは下がってしまいますが、なるべくその温度を下げないように意識しながら、ものづくりの現場をお届けしたいですね。
ーTRUNK DESIGNさんは、今回の株式会社 大発さん以外にも職人さんと一緒に商品開発をされているんですよね。職人さんとモノづくりをするという点で、心がけていらっしゃることはありますか?
株式会社 大発にて、和紙を漉く工程
職人さんとの関係づくりですね。TRUNK DESIGNでは商品づくりに1年ほどの時間をかけ、職人さんとの関係性づくりをしっかりとしたうえで、デザイン制作に入る場合が多いです。お互いにリスペクトし合える関係性だからこそ、ずっと一緒に伴走していけますし、信頼性を深めていけるんだと思います。
今は日本中の職人さん、そして台湾の職人さんともお仕事をしているんです。毎月会いに行き、実際にディスカッションをすることでお互いの理解を深め、無理難題を一緒に乗り越えていく関係性ができていると思います。時間はかかりますが、だからこそ一緒に仕事ができることが幸せでもあるんです。
理想とする空間に商品がある嬉しさ
ー台湾の職人さんともお付き合いがあるんですね。
Pinkoiに出店してからのお客様の反応というのはいかがでしょう?
インテリアと一緒に撮影してくれたお写真や、使用シーンの写真をInstagramに投稿してくれるお客様がいて、本当に僕たちが理想とする空間に「Ku」や「Daily」があることがありがたいな、と。そして、Pinkoiを通じて多くの方々の生活に寄り添えていること、僕たちが一番自信を持っている香りのクオリティが高いと評価してもらえていることが本当に嬉しいですね。
ーそう言ってもらえると私たちも嬉しいです!
最後に、今後チャレンジしていきたいことを教えてください。
オンラインで香りを伝えるということは簡単ではありませんが、いろんな香りのサンプルをお届けしつつ、お香をつくっている工場からオンライン配信で香りの説明や製造工程を見せていくということもやってみたいと考えています。
オンライン工場見学という新しい試みで、アジアの皆さんと工場をお繋ぎして、香りを楽しんでもらえる機会を増やしていきたいですね。
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