Pinkoi Design Awardで「Stylish」賞、「Designed」賞で受賞した6つのブランドといっしょに、デザインとは何かを考えました。
デザインとは?
デザインとは、ある人にとっては「問題を解決する最適解」であり、またある人にとっては「特定のメッセージを伝える技術」でもあるでしょう。デザイナー、ブランド、そして消費者をつなぐプラットフォームであるPinkoiにとって、デザインの目的は生活の「質」を高めることであり、それは美しさと機能性をもつものと考えています。
質とは、プロダクトそのものだけではなく、ブランドが持つ強力なパワーのことを指します。ブランドのスタイルや理念が消費者の暮らしのなかに入り込み、デザイナーと消費者の間に美しいつながりをもたらす、そんなパワーをもつブランドにスポットを当てるため、2022年のPinkoi Design Awardにおいて「Stylish」賞、「Designed」賞を設けました。5つのデザイン賞のなかから、今日はそのふたつの受賞ブランドをご紹介します。
デザイン、展示会、文化クリエイティブなどの分野で国際的に活躍する審査員たちによる協議の結果、第一回 Pinkoi Design Award「Stylish」賞には、ラブグッズメーカー「HARU」、文具と器の専門店「HMM」、コーヒーブランド「le brewlife」の3ブランドが選ばれました。
受賞した3ブランドはすべて、自分たち自身のニーズからマーケットの声を拾い上げ、その問題をブランドの目標に転換し、新しいライフスタイルを創造したという大きなパワーを持っています。
HARU ラブグッズを身近に 自由に愛を育めるように
HARUの創業者Mancyは「性は明るい太陽の下で語られるべきもの」と考えています。また、スタイリッシュなパッケージデザインによってラブグッズのイメージを変え、これまで男性中心だった市場で、女性が自分自身を理解し、自分の体について健康的に話せるよう願っていると話しました。
香港の審査員代表・毛灼然は「パッケージのビジュアルデザインこそがこのブランドの最大の魅力であり、このデザインによって国際審査員の注目と評価を得ることに成功したと言えるでしょう」と絶賛しました。このほか、HARUが若い女性を主なターゲットとしていること、そして、若い女性だけではなく多くの男性や年配の母親世代も愛用していることなどが、インタビューで明らかになりました。
HMM 仕事と暮らしに、秩序ある質感を
道具は表現のひとつであり、道具の選び方にはその人の生活態度や美意識が表れると考えるHMM。このブランドのデザインの本質は、デザイナー自身の仕事に対する考え方の延長線上にあります。丈夫で長持ちする製品とは何か、より整った空間とはどうあるべきか…終わりなき問いを真摯に考え、向き合い続けています。
「どんなに優れたデザインの製品でも、それを実現するためには職人が必要なんです」HMMの共同創業者であるMichaelは、製品のデザイン・開発から生産段階に至るまで、職人の経験を頼りにあらゆる問題を考え抜くことが、製品の品質を安定させ、最高の品質を実現するために重要だと語りました。
台湾のアート文化ブランドを見つめてきた香港の審査員・毛灼然は「コンセプト、デザイン、機能、マーケティング戦略などの面で優れており、国際的な視野を持っているブランドだ」と評価し、自身が台湾を旅行した際にもあちこちの店でHMMの製品を見かけたそうで、「実は私も買ったことがある」と笑顔で話しました。
le brewlife 一日の始まりは、ゆったりとしたコーヒーから
カラフルなパッケージのリキッドコーヒーで知られるle brewlifeですが、創業当初は、世界の美味しいコーヒーを台湾に持ち帰ってシェアすることがミッションでした。旅を終え、世界中のコーヒーを味わった彼らは今、自家焙煎コーヒーブランドを立ち上げ新たなミッションに挑んでいます。
創業者のNoelleは世界を旅する中で、おいしいコーヒーがどこでも飲めるわけではないこと、また、簡単に手に入るコーヒーが必ずしもおいしいとは限らないことに気がつきました。 そこで「一杯のコーヒーで世界の距離を縮める」をミッションに、いつでもどこでも誰もが、手軽に上質なコーヒーを楽しめるよう、独自の抽出技術をいかしたコーヒー作りに取り組んでいます。
le brewlifeのコーヒー豆、フィルター、リキッドコーヒーパックは、コーヒー愛好家たちに多様な選択肢を提供してきました。例えば、忙しい仕事の日は手軽にリキッドで、そして時間のある休日にはコーヒー豆を挽いてゆっくり楽しむことができるのです。中国の審査員・謝品華は「le brewlifeはユニークなスタイルと明確なミッションを持っている。将来的にはイベントやポップアップショップを企画し、顧客体験を高めることもできる」と講評しました。
「Designed」賞では、人々の生活体験を広げ、かけがえのない暮らしのパートナーとなっている製品を生み出すブランドにスポットを当てました。この部門では、ティータイムやコーヒーブレイクを豊かにする「Simple Lab Experience」、50年以上にわたる職人技でサステナブルな食器を生み出す「uanuan」、蜂蜜瓶の使い方をアップデートした「BnnBee」の3ブランドが選ばれました。
Simple Lab Experience 自然の原理に学ぶ、手軽でおいしいお茶の時間
香港発の「Simple Lab Experience」は現代茶文化の専門企業で、現代の暮らしと美的センスに合った新しいお茶やコーヒー、周辺製品を手掛けています。「A more enjoyable drinking experience」という理念のもと、自然の仕組みを観察し、その物理的な原理をフィルターの濾過装置などのプロダクトデザインに取り入れています。
主な素材は透明度の高いホウケイ酸ガラス。安全性や美しさはもちろん、お茶の葉が水の中で広がり揺れる様子を眺めることで、心癒されるティータイムとなるでしょう。
uanuan やさしい食器がつくる、サステナブルな暮らし
ステンレス加工分野で約60年の経験と技術をもつuanuanは、サステナブルな食器づくりを理念に掲げ、台湾の昔ながらの暮らしのエッセンスをデザインに組み込んだ商品を手掛けています。ステンレス製の一体型ランチボックスは、傷つきやすい溶接部分や汚れやすいパッキンがなく、仕切りの高低差によって内容物が混ざりにくい構造になっています。
台湾の審査員代表・羅申駿は「uanuanは、台湾のこれまでの社会的文脈と記憶を受け継ぎながら、人々の行動とマテリアルデザインに変化をもたらしました。 表面材質の処理方法、洗いやすさ、持ち運びのしやすさ、保温や加温性の問題…これらの実現は簡単なことではありません。このブランドは、革新のための革新ではなく、ユーザーのニーズとよりよい食卓体験を最優先にデザインを手掛けているんです」と評価しました。
ステンレスの冷たいイメージを打ち破るあたたかい製品を作ることで、消費者にもブランドにも地球にもやさしい、持続可能なサイクルを創り出しています。
BnnBee 蜂蜜を暮らしのパートナーに
蜂蜜製造業で100年の歴史をもつ「BnnBee」は、ユニークなキャップデザインによって蜂蜜の使用シーンをより快適なものに変化させました。
「Drop Me」は蜂蜜を取り出すときのべたつきなどの問題をデザインで解決し、2019年の Red Dot Design Award Taiwan で大賞受賞。また「Back Up Me」は、国際的なデザインコンペティション Muse Design Awardsで銀賞を受賞しました。
今回、日本代表審査委員・山田遊も「かつてない発想のデザイン」と高く評価しました。
革新的なデザインにより、天然の蜂蜜を人工甘味料に代わる存在として提示し、また台湾蜂蜜が国際的に注目される機会を生み出したのです。
以上、6組のデザイナーズブランドを紹介しました。みなさんにとって、デザインとは何でしょうか?デザインとは、美であり、メッセージであり、アイデアのツールであり、問いへの答えでもあります。 私たちがデザインを理解し、デザイナーズプロダクトを紹介することで、世界にメッセージを発信していることにもなるでしょう。『Diet for a Hot Planet』の著者・Anna Lappeの「消費するたびに、私たちは望む世界に投票している」という言葉を忘れてはいけないと思うのです。
Pinkoi Design Award 受賞ブランドをもっと見る:Pinkoi Design Award 2022
※本記事は、台湾「Shopping Design」のサイトにて掲載の内容を翻訳・編集したものです。
取材・文/Shopping Design 謝繕聯
編集・翻訳/Pinkoi エディター Nana