こんにちは!Pinkoiでプロダクトチームのデザイナーとして働いています、Kameです。2018年11月21日〜27日の7日間、Pinkoiは大阪・梅田の阪神梅田本店で『Pinkoiマーケット in Osaka 2018』を開催しました。計48ブランド、約100名のデザイナーが台湾から来日し、盛大なマーケットイベントとなりました。私はマーケットのポスターや販促物などのデザインを担当しました。そこで、イベントの舞台裏、準備の段階でどんなことが起こっていたのか、当日の現場の雰囲気はどんな感じだったかなどをお伝えしたいと思います。
Pinkoiマーケット日本初上陸となった今回のイベントは、大阪の阪神百貨店さんからお声がけがあり実現することができました。阪神百貨店さん主催の『阪神の台湾フェス』に雑貨担当としてPinkoiが加わることになったのです。
このイベントで私たちが掲げたテーマは2つ。
1.『阪神の台湾フェス』での出展を通じて、台湾の魅力を日本の皆さんに伝え広めること。
2. 日本の皆さんにPinkoiというサービスをもっと知ってもらうこと。
これらを目標に、私たちPinkoiスタッフのマーケット準備が始まりました。
まずは準備段階のことから。
イベントのフロアプランを、打ち合わせしながら作っていきます。
まず一番はじめにしたことは現地調査。実際に現地・大阪へ足を運び、会場となる阪神梅田本店の下見を行いました。次に会場内の計測。奥行き、広さ、天井の高さなどのサイズを正確に測る他、その場の空間を感覚的に把握していきました。何ブランドが出展できそうか、デザイナーによるワークショップの開催は可能かどうか、ワークショップの内容は何にしようか、など具体的なイメージが湧いてきます。実際にその空間に立ってみることは、イベントのプランを立てるのに、とても大切な作業のひとつです。
会場となる阪神百貨店のスタッフの方とメールで相談しながら、各ブランドの配置や、ブース番号、ブースのデザイン、什器の配置など大枠を固めたところで、次に細かい部分のビジュアルや、デザインの手配を始めました。Pinkoiスタッフと手分けして、広報プランニングや、出展ブランドとの連絡などを進めていきました。
1つ目のテーマ──台湾の魅力を伝えるために
日本の方々が台湾と聞いて思い描く印象はいったいどんなものなのでしょうか?
それを知るため、Pinkoiの日本人スタッフに台湾の印象を聞いてみたり、日本の雑誌や書籍、オンラインメディアで特集されている台湾の記事などを読んだりしてみました。そこで気がついたのは、私たち台湾人が日本を旅する時の感覚と同じように、日本の方々も台湾の町並みや何気ない風景に興味を持っている、ということ。最近の台湾ブームの影響もあってか、台湾特集が組まれる誌面でも、有名観光スポットだけではなく、台湾での普通の暮らし、生活環境、文化などが幅広く取り上げられ、紹介されています。
そこでふと思い浮かんだのが「鳳梨彩球(パイナップルの形をした飾り)」です。会場内のブースこれを飾ったらいいんじゃないかな、と。台湾ではパイナップルの飾りをよく見かけます。お店の開店祝いや、オープニングイベントなどのお祝いごとに欠かせないアイテムなのです。台湾語でパイナップルを「旺來(おんらい)」と言い、その発音が繁栄と幸運を意味するので、パイナップルは台湾では縁起のいい果物なのです。Pinkoiマーケットがこうして大阪進出できたこと、これはまさにツイてる幸運のサインです!縁起をかついでこのアイテムを選びました。
当初「日本の皆さんに気に入ってもらえるのかなぁ?」と心配するスタッフもいましたが…
実際に飾ってみたらバッチリ!
メインブースの大きなパイナップルの飾り。福を招くサイズを選びました!
期間中はイベントのシンボルとして来場者の方々の目を引いて、本当に福を運んでくれました。やった〜(笑)!
それぞれのブランドのブースにはミニサイズのパイナップルの飾りを配置。小さくても存在感と統一感があって会場全体が引き立ちました。
イベント当日に向けての準備。
一番苦労したことは⋯⋯会場で配布するプレゼントのこと
「豚の貯金箱は?」
「台湾らしいけど、日本には無いものの方がよくない?」
「飴ちゃん作ろうか?」
「『大阪のおばちゃんは飴ちゃん袋を持って飴を配って歩く』って聞くけど、イベント会場で人から飴もらってうれしいかなぁ?」
「文具は?」
「うん⋯⋯いいね。いいよ。でも、文具ってありきたりかなぁ⋯⋯」
「う〜ん…」
こんな具合に何度もスタッフでアイデアを出し合い、打ち合わせを重ねてたっぷり悩んだ結果、テーマである「台湾の魅力を伝える」に立ち返り、台湾ではおなじみのショッピングバッグ(茄芷袋)を選びました。丈夫だし、クラシカルで、台湾らしい。私の祖父母たちの世代は今でも、市場へ買い出しに行く時や農作業に出かける時に持って歩く、とても実用的な逸品です。日本人スタッフからも、台湾の可愛い雑貨として大好評でした。
実はこのショッピングバッグ、製造工程のほとんど全てが手作業なんです。ミシンでひと針ひと針丁寧に縫っていく手間のかかる作業のため生産性が高まらず、ショッピングバッグを製造する工場が減りつつあるらしく、良い商品なのに、もったいないなぁと残念に感じました。でもイベント会場で、このショッピングバッグが日本の方々にも人気があるとわかり、1ヶ月以上手間暇をかけて製作した甲斐があったなと感じました。直接的にショッピングバッグ存続の危機を救えるわけではないけれど、来場者の方にも工場の方にも喜んでもらえたから本当に良かった!
Pinkoiのロゴ(小さい鯉)をモチーフにした旧正月用の春聯(ちゅんりえん)
台湾の風習を日本の方に知ってもらうために作りました。
イベントの約一ヶ月後、12月末に日本では年越しと新年を迎えます。台湾のお正月は「旧正月(※)」で日本と時期が異なりますが、私たちは来場者の方に台湾の旧正月の雰囲気を少しでも身近に体験してもらおうと、春聯(ちゅんりえん)という正月飾りも用意しました。持ち帰って家に飾ったり、家族と共有してもらえるように…と考えたのですが、 Instagram にハッシュタグ「#pinkoi台湾フェス」をつけて拡散してくれた方も大勢いて、とても嬉しかったです(笑)。
※2019年の旧正月(春節)は2月5日(火)でした
2つ目のテーマ──Pinkoiを日本の方々に広く知ってもらうために
台湾フェスの来場者へ配るプロモーション用の販促物。
このイベントに出展しているブランドの魅力やPinkoiというサービスのことを伝えるため、2冊のリーフレットを会場で配布することにしました。1冊目は台北の魅力がぎゅっと詰まった内容。2冊目はPinkoiのサービスや出品ブランドを紹介した内容。
Pinkoiはオンラインのショッピングサイトですが、こうしたマーケットツアーを行うことでデザイナーとお客様が直接交流できると考えています。お客様は実際に商品を手にとって、触ってみることができ、デザイナーはお客様の生の反応を知り、対話からヒントを得ることができる。お互いを知り、よい関係を築いていくきっかけになる場作り。その架け橋としてPinkoi マーケットは存在していると感じています。
久々の手描きのイラスト。日本語を書く練習もしました。
もう一つ面白かった販促物が、日本人スタッフのアイデアで用意した、白黒2色の手描きのチラシ。台湾では見かけることが少なくなりましたが、日本では今でもこういった手作り感のある手描きチラシを見かけることがあります。カラフルな印刷物よりシンプルな手書きチラシの方が、親しみを感じて手に取りやすく、想いが伝わりやすいのかもしれませんね。
やっと作り終えた⋯⋯
長い準備期間を経て、イベント前日を迎えました!
私が開場に着いてはじめに出くわしたのは、納品されたままの状態のパイナップルの飾り(の山)。今までたくさん吊って飾ってあるのは見てきたし、小さい頃翻紙花(ふぁんじーふあ)という台湾版の折り紙のようなもので飾りを作ったこともあるけれど、実はパイナップルの飾りを作るのは初めて。素材が薄くてへなへなで繊細に取り扱う必要がありました。どうやってこの山積みの平たいパイナップルを、あのきれいなボール状の飾りにしたらいいの、イベント当日までに間に合うのか〜!?
到着して最初の任務はパイナップルの飾りをつくることでした。
ミニサイズの方は、折りたたんで開いたらあっという間にパイナップルに。慣れてきたら、比較的簡単。
各ブランドがディスプレイし始める前の会場。ここから飾り付けていきます。
イベントが開幕!会場の様子はこんな感じです
予想以上に反響のあった特製ショッピングバッグ。
準備中にあれこれ心配していたことも、イベントが始まってしまえば心配ご無用でした。会期中は、おかげさまで大大大盛況!千客万来、会場内は活気に満ちあふれていました。(パイナップル効果かも!?)
会期中は日本の方々以外にも、日本に長く住んでいるような台湾人の方々も多く足を運んでくれました。自分が生まれ育った台湾の味や雑貨などが並ぶ会場の中、このショッピングバッグを見つけて駆け寄って
「ああ、懐かしい!阿嬤(あま/おばあちゃん)が持ってそう〜!」
と懐かしげに、でもちょっと寂しげに話しかけてきてくれました。それを聞いた私まで、つられてちょっぴりホームシックにかかってしまいました。(その数日後に台湾に戻るのに?)
今回、日本のPinkoiスタッフと力を合わせて無事にイベントを開催できたこと、会場へ足を運んでくださった来場者のみなさんと直接お会いできたことは、とても貴重な体験になりました。日本のニーズを間近に知ることができたし、現地チームの助けがあったからこその成功だったと思います。本当にみなさんありがとうございました!
私がお伝えできるのは、イベントの準備期間に起こったことやイベント当日のほんの一場面にすぎません。事前の市場マーケティング調査、出展ブランドとの調整、日本向けのローカライゼーションなど、それぞれを担当してくれたPinkoiスタッフたち、阪神百貨店の従業員の方々も含め、バックグラウンドがそれぞれ異なる関係者が一丸となってこのイベントに取り組み、協力し、力を合わせたから、この大きなプロジェクトは無事幕を下ろすことができました。
そして、主役となった台湾ブランドの数々!クオリティの高い作品を持ち寄り、台湾からイベントに参加してくれた、Pinkoiの優秀で素晴らしいデザイナー・クリエイターのみなさんに、大きな感謝と敬意を表します(舞台袖から大きな拍手を送ります?!)。
原文:Pinkoi Market in Osaka — 幕後準備 written by Kame Syu
抄訳執筆:甲田智恵
編集:別所ゆかり