台湾の素敵なデザインのお店を紹介!今回は、台北市安和路の路地裏にひっそりとに佇む知る人ぞ知る空間「什物 a kind of café」にお邪魔しました。
コンセプトは何でもあり!「食」がテーマの気ままで自由な創作スペース
中国語の『食物』と同じ発音の『什物』(シーウー)。料理人のPearlさんとイラストレーターのYulinさん、二人のクリエイターが営む「食」をテーマにした空間です。ある時は食堂として、またある時はワークショップのスペースとして…、さまざまな顔を持つ『什物』。ひとつの枠に縛られないユニークな空間は、どのようにして誕生したのでしょうか?ジャズが流れるゆったりと心地よい空間で、お二人にお話を伺いました。
『什物 a kind of café』という名前の由来を教えてください。
Pearl:二人とも常日ごろ『什錦』(中国語で多様性に富むという意味)という事についてよく考えているのですが、ある日突然ひらめいたんです!『什物』(シーウー)という名前は中国語の『食物』と同じ発音だし、私たちの個性をよく表してるんじゃないかって。そういえば昔、父が『什物』と台湾語の『何』も同じ音だと言ってたし。カフェともレストランとも定義できない、ひとつのスタイルに縛られない私たちにぴったりだと思いました。
Yulin:もともとは『什物』という名前の他に、 『Mon marché(私の市場)』というフランス語名もありました。みんなが欲しいモノを選びに来るというコンセプトです。でも、フランス語の名前だとフランス料理のレストランだと勘違いされてPearlの気が動転しちゃうので、後から「a kind of café」に変更したんです。
Pearl:私たちは a sort of café,café(カフェの一種)であり、またone kind of café(一種のカフェ)です。
Yulin:ちょっと複雑すぎない?思い切って、英語名はやめて『什物』だけにしちゃえばいいのに!
Pearl:だめだよ!それじゃ英語のサイトに登録できないでしょ!
現在のスタイルになる前は、メニューのないレストランだった『什物』。どうしてメニューを作らなかったのでしょうか?
Pearl:創業するにはラベリングが必要です。でもお店をオープンした頃、私は「ル・コルドン・ブルー 」というラベルを貼られることに抵抗がありました。一度ラベルを貼られると、まるで私がフランス料理を作れるかのように思われるので。「ル・コルドン・ブルー 」で学んだのは事実ですが、私は正統な作り方で料理しているわけではありません。自己流のリラックスした方法でちょっぴりテキトーな料理を作ったり、時間を無駄に過ごしたり、色んなところへ行って食べたりするのが好きなんです。気取らない自然体がいいですね。
Yulin:彼女と一緒に仕事をしてきた3年間、メニューは何かいつも聞かれてきましたが、でも本当にレシピがないんですよ。それこそがたくさんの人たちを虜にする理由なのかもしれませんが。
Pearl:私たちは、もしかしたらメニューのないカフェじゃなくて、きっと訳の分からないカフェなんじゃないかな。最初は料理の名前を聞いてきたお客さんも名前すらないことに気づくと、少しずつ慣れていくみたいです。いつも料理の名前を言う時には、「料理名はぐちゃぐちゃです」って説明したり⋯⋯。
Yulin:あとは、「ブサイク」、「黒いやつ」とかね(大笑)。
ブランドネームから食器の創作に至るまで、「食」をこよなく愛するお二人。何か理由があるのでしょうか?
Pearl:私は、食にうるさい家庭で生まれ育ちました。父が毎日台所に立ってごはんを作り、外で買ってきたお弁当も必ずうつわに綺麗に盛り付け直していたほどです。Yulinと話してると決まって食べ物や家庭の話題になるのですが、お互いの家庭の食に対する考え方がこんなにも違うのかと驚きましたね。
Yulin:うちは両親ともサラリーマンなので、仕事帰りはクタクタ。毎日お弁当を買って食べるのが習慣でした。父がミリタリーファンだったので、うちではステンレス製の食器を愛用していたんですよ。一見冷たいけれど実は暖かいステンレスの食器は、私の子どもの頃の想い出です。実家の白色蛍光灯に照らされると、なんだか刑務所で食事してるみたいに無機質でずっと抵抗があったんですけれどね(笑)。でも今では、「あぁ、これが僕のうちなんだな。これが自分なんだな。」って思うようになりました。
Pearl:みんなステンレスの食器なんて刑務所みたいって言うけど、私はかっこいいと思う。私たちにとって、キッチンは研究室であり、スタジオであり、家なんです。フランスから台湾に戻って来て、この考え方を整理して一つのコンセプトにしようと思いました。
カフェからアトリエという形になるまでのお話を聞かせてください。
Yulin:店をオープンさせたのが2012年。最初はカフェという形で営業していましたが、時間が経つに連れて「食」へのこだわりがカフェの枠を超えているなと気づいたんです。お客さんも私たちの料理をとても楽しみにしてくれていたので、レストランへと少しずつスタイルを進化させていきました。当時は全く意識していませんでしたが、カフェからレストランへと変化した影響はとても大きかったですね。
Pearl:食へのこだわりから、日々昼夜問わず料理をしていると、仕事量が増えて過労で体調を壊してしまいました。そこで、お店のテナント契約が終了したことをきっかけに、本当にやりたいことをすることにしたんです。 例えば、DIYやハンドメイドなんかの創作活動とか。ここに引っ越してきたのは2015年です。
とても心地良くて素敵なインテリアですね!
Pearl:カフェの時よりも狭いのに、今の方が家賃は高いんです。この場所でまたお店を開きたいと話していたんですが、イベントを数回して気づきました。たくさんの人が一同に集まるこのスタイルが好きなだって。ここに引っ越してきてからは、大好きな草花を拾ってきたり、好きなものを置いたりして、お気に入りのモノたちが共存する空間を創りました。
Yulin:パリや台北、どこにいても変わらず自分の好きなことをする暮らしが好きなんです。彼女は草花が、私はイラストが好きなんですが、自然と住む場所にも好きなモノゴトが反映されていますね。生活する空間は、あるスタイルを盲目的に追求した結果ではなくて、それぞれの個性や生き方を反映させて、その人ならではのスタイルを創り上げていくべきじゃないかな。
個性も背景も全く違うお二人ですが、一緒に仕事をする上でどうやって役割分担しているのでしょうか?
Pearl:マーケティングに関しては私の方が理解しているので、私がマネージメント業務をして彼には完全なるアーティストでいてほしいですね。Yulinがカップに絵を描く時、「小鳥と惑星のイラストが人気が出ると思うよ。」ってアドバイスするんです。描くことに没頭して止まらない時には、「今日はもうその辺にしたら」って声をかけています。
Yulinさんの作品のスタイルを教えてください。
堅苦しくて難しい物事は人を遠ざけるので、シンプルでインスピレーションを掻き立てるような作品を創りたいですね。
Yulin:子供が描くような単純な絵が好きです。「これ、自分でも描けるじゃん!」と感じる作品に出会った時は、刺激を受けた時なんです。だから自分の作品もシンプルで、他の人にも自分できると思ってもらえたら素敵ですね。でもちょっと矛盾していて、子供の描く絵は簡単そうに見えて、決して大人には真似できないんですよね。
『什物』とPinkoi とのストーリーを教えてください。
Yulin:Pinkoiのことは、プリント生地ブランドの印花樂 inBlooomを通じて知りました。Pinkoiが不定期に開催するデザイナー向けの講座は、ベテランから若手まで学ぶことができて、とても行き届いてると思います。大規模な通販サイトで販売しようと思ったこともありますが、 品質を大事にしたいのでPinkoi でショップを運営することに決めました。
Pearl:他の通販サイトでは商品が管理されていませんが、Pinkoiは審査制なので欲しいものが探せるし、品質の良い物が揃っています。それに創作を重視しているところが、台湾のプラットホームでは私たちに一番合っているなって。オープンで色々なタイプのクリエイターがいて、層の厚みがどんどん増しているところも魅力的です。
今後のイベントの予定を教えて下さい。
Pearl:シルクスクリーンの DIYや巻き寿司の作り方、アートの講座を開催予定です。その後は、2週間だけ食堂をオープンさせます。「花」というテーマで、バラやジャスミンなどを使って料理を作り。テーマに合わせてインテリアも変更するつもりです。
什物 a kind of café
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