4月20日から『私的台湾』というウェブイベントを開催しています。
『私的台湾』とはアジア最大級のオンラインデザイナーズマーケット『Pinkoi』に参加している台湾Loverな日本人デザイナーと台湾人デザイナーがそれぞれ「自分が感じた台湾」をモチーフに作品を発表するというもの。日本人が感じる「これぞ台湾!」そして台湾人が感じる「これが台湾!」色んな作品をコチラのページで今見ることができます。
今回さらに、参加した日本人デザイナーの台湾モチーフ作品から特別にPinkoi大賞を決めることにしました。
審査員は特別ゲストで台湾と日本をつなぐ 『台湾品質』プロデューサー田中佑典さん、PinkoiのCEOであるピーター、そしてPinkoiマガジン編集長の東洋子です。
3人がそれぞれ自分の気に入った「これぞ、これが台湾!」な作品を選び、また自分なりの台湾の魅力についても語りました。あなたの「私的台湾」は何ですか? 一緒に考えながら読んでもらえるとうれしいです。
◎ 田中佑典が思う、日本人が今台湾に惹かれる理由
ー 日常と非日常の絶妙なバランス
日本人の私たちにとって、台湾の魅力の1つは「日常と非日常の絶妙なバランス」だと思います。街を歩いていても、街並みはどこか日本と似ているし、看板などの漢字もなんとなく読めちゃう。でも夜市など日本では感じられないアジアらしい空気感もある。そのバランスが日本人にとってなんとも心地いいから、台湾を好きになる日本人が増えているんだと思う。
また、ハンドメイドカルチャーやリトルプレス、リノベーションや街づくり、ローカル移住など、台湾人と日本人のカルチャーに対する好みもとても似ていて、共感を生みやすい関係だと思います。
Source:台湾品質
ー 台湾人の見切り発進な考え方
もう1つの魅力は、台湾人の「見切り発進」的な考え方です。僕自身、雑誌『LIP 離譜』を台湾でやってみようと思ったのも、現地で出会ったクリエイターの友人たちが失敗してもいいからまずはやってみようと挑戦する姿を見たから。台湾人はよく「だいたい」という意味の「差不多(チャブドー)」という言葉を使いますが、この言葉は色々考えすぎてスピードが遅くなりがちな日本人にとっては新鮮な感覚。肩の力をすっと抜いてくれる魔法の言葉です。
Source:小編的 Culture & Art Book Fair in TAIPEI 見聞錄
一方で台湾人は日本人のじっくり時間をかけて、丁寧に物事を考えたり作り上げていくことが素晴らしいと思っている。そういう「相互に足りないものを認め合う関係」が台湾と日本間の交流を盛り上げ、刺激し合っているのだと思います。
?Pinkoi大賞? 笑龍包
今回Pinkoi大賞を決めるにあたって日本人らしい着眼点があって、かつ台湾人の目線からでも笑える面白いものかを選考の軸とさせていただきました。実は台湾人は意外にも普段からそんなに食べない小籠包。現地の台湾人では体験できない旅行者ならではの面白いあるあるエピソードを見事に表現していると思います。僕も台湾旅行のときは、これを持って行き、現地の友達にも「何コレー!?笑」とツッコンでもらいたいです。
◎ Pinkoi CEOピーターが食卓から感じる台湾文化の情感
ー 日本の文化に包まれた少年時代を振り返って
台湾の特色ある文化は、歴史の中で様々な外国文化の影響を受けてきたこと以外に、農村部の生活習慣からも大きな影響を受けていると思います。私は台湾南部の街『台南』という土地で生まれ育ちました。そこでは日本語教育を受けた祖父母と一緒に、彼らが話す日本語、彼らが見ていたテレビから流れる日本のテレビ番組を見て、演歌をともに歌いながら生活をしました。そんな環境の中で、私は日本に対する親しみや礼儀作法について興味を持つようになったのだと思います。
どこか日本の面影がある台南の風景
ー ご飯をいつ食べる?かで違う日台の食に対する考え方
子供の頃によく言われたのが「まずは白ご飯をたんと食べてお腹いっぱいにしなさい、毎日魚や肉があるなんて期待しないこと」「働かざるもの食うべからず」といった言葉でした。これは台湾の食文化を言い表していると思います。
台湾の伝統的な食事の順番はまず白ご飯から。日本食レストランに行くと白ご飯はいつも最後に出てきますよね。これは台湾と日本の食文化の大きな違いかもしれません。「まずはすぐにお腹をいっぱいにすること」こんな合理的な食事に対する考え方が、シンプルで飾り気のない料理の見た目にもつながっているのだと思います。
Source:高雄の街で女ひとり旅・西子湾エリア
ただ、食材の選び方や調理方法には日本料理と通じるこだわりがあると思っています。夜市の屋台であっても有名シェフ顔負けの絶品料理が食べられることは珍しいことではありません。このように食へのこだわりが小籠包、牛肉麺や肉団子など日本人のみなさんが愛してくれる台湾料理を生み出してきました。
?Pinkoi CEO賞? 九份イヤリング
古くから九份は台湾の発展に寄与してきた場所。そして早くから映画のロケ地として台湾人にとってもおなじみの場所です。狭い階段いっぱいに広がる小さな商店、そこから広がる台湾茶の香り、階段から連なるように夜空を飾る赤い提灯。これこそ、台湾の人情と歴史を感じる風景といっても過言ではないはず。
台湾と日本、国が違ってもその風景を見てなぜか同じような懐かしさを覚える、不思議な場所ですね。そしてその雰囲気そのままをイヤリングで表現しているこの作品を今回、私は選びました。そして、ひと針ひと針丁寧に手仕事で作られている様子が、日本と台湾の親密な関係を示していると思いました。
◎ 編集長 ヨーコが振り返る、2年8ヶ月の台湾生活
ー 決してスムーズとは言えなかった台湾移住
2回の台湾旅行のあとに決めた「台湾移住」。台湾に住んでいると言うと「いいな、うらやましい!」と多くの人に言われますが、楽しいことばかりではありませんでした。最初はおいしいとパクパク食べていた、台湾の屋台料理が食べ飽きて口に入らなくなったり、言葉の問題から自分の言いたいことが伝えられずモヤモヤしたり、暑くて湿気の多い天気にヘトヘトになったり…。今では笑顔で台湾が大好きと言える私ですが、ここまでくるのに、日本に帰りたいと泣いた夜がいくつもありました。
中国語学校にて、写真一番左
ー やりたいならやればいい、失敗してもお互いさま
最初に受け入れられなかったことは「なぜ台湾の人は、周りの迷惑を気にしないんだろう」でした。でも、これは日本的な考えから出た発想。つまり周りの人の事を考えすぎて、自分が良いと思えることをなかなか実践できない、また他人が犯した小さな失敗を許すことができない。という良く言えば慎重すぎ、悪く言えば寛容性がない考えを私は持っていました。
どこでも人のふれあいがある台湾の街角
台湾に来て、道ばたでおじさんが水浴びをしていたり、おばさんが大きな声で歌いながらダンスをしていたり…こんな風景を見て、「あぁ、自分が好きなことをやればいい。人の目を気にする必要はない」そして「誰かの挑戦を素直に応援する、そして何かあってもお互いさまで許そう」という人生で本当に大事にすべき考え方のエッセンスを学ぶことができました。このような考え方を身につけられた後、台湾への理解がグッと深まり、文字とおり第二の故郷と言える場所になりました。
?Pinkoi 編集長賞? 台湾原住民テキスタイルのポーチ
台湾は多民族国家だと知っていましたか? 中国大陸からの移民の他に、16の「原住民」と呼ばれる少数民族がともに暮らしています。今回、この作品を選んだ理由はこのような意外と知られていない台湾の文化に対して、日本のみなさんの理解が深まればいいなと思ったからです。スタイリッシュに見えるストライプですが、その生地からは自然を大事に守る台湾原住民の思いが感じられます。
ーー 編集後記
今回、日本のデザイナーが作った台湾モチーフの作品を見て、私たち日本人スタッフ以上に台湾人スタッフが「かわいいーー!欲しいーー!」と興奮していたのが印象的でした。理由は、これまで台湾では台湾のデザイナーが「日本の風景や文化」からインスピレーションを得て創作をすることは多々ありました。だけど、日本のデザイナーが「台湾の風景や文化」からインスピレーションを受けた作品を見ることが少なかったからだそう。
これからも隣国同士、様々な違うところ・似ているところをお互いに面白がりながら、デザイナーたちの交流がもっともっと深まればいいなと願うばかりです。
LIP 田中佑典
日本と台湾をつなぐカルチャーマガジン『LIP 離譜』編集長。 『台湾品質』プロデューサー。アジアにおける台湾の重要性に着目し、2011年から日本と台湾を行き来しながら、日台間での企画やプロデュース、執筆、クリエイティブサポートを行う。2017年12月には東京・蔵前に台湾カルチャーを五感で味わうTaiwan Tea & Gallery『台感』をオープン。その他語学教室「カルチャーゴガク」主宰。著書に『LIP的台湾案内』(リトルモア)。
Pinkoi CEOピーター
シリコンバレーにて7年間の勤務経験を持つ。うち4年間は米国Yahoo本社にて、かつ数多くのグロバールサービスの開発をリードする。例えばYahoo Answers(Yahoo! 知恵袋)の開発など、ソーシャルネットワーク向けの検索プラットフォーム構築業務を経験。アジアのデザイン業界をより多い価値をもたらし、優れたデザイナーを海外に紹介することを目指している。オフには子供と遊んだり、家族のために料理を作ったりする一面もある。
編集長 ヨーコ
台湾と京都を行ったり来たりしている編集者。ビールとコーヒーをこよなく愛する健康オタク。オシャレなレストランより、赤ちょうちんの居酒屋が好き。山の中で生まれ育った反動で、休みがあるとすぐに海に飛んで行きます。台湾の1人火鍋が大好き。少しでも多くの人に台湾のリアルを伝えるべく奔走中!
テキスト:東 洋子
スペシャルサンクス:応募頂いた全てのデザイナーのみなさま